ドリンク剤・ミニドリンク剤
薬局・薬店やドラッグストアの店頭で、お客さんが「リポビタンちょうだい」と言ったとします。
「どのリポビタンですか?」と聞き返すと、ちょっと困った後に、「普通のリポビタン・・・」というアバウトな答えが返ってきたりします。そう、リポビタン、ユンケル、チオビタ、エスカップ、アスパラ、グロモント、ゼナ等々、どれを取っても製品はひとつではありません。リポビタンシリーズだけでも17種類、ユンケルシリーズは20種類もあるのです。
■【ドリンク剤市場とは?】
OTCを語るとき、ドリンク剤は避けて通れません。いわゆる栄養ドリンクはOTC市場の3割を占め、なんと100アイテム以上もあるのです!!(ドリンクタイプの胃腸薬、かぜ薬、咳止め、鼻炎薬、乗り物酔い止め等は除きます。)残業だ!テスト勉強だ!風邪気味だ!−そんな時、元気をつける為に飲むものです。
今回は、抑えておきたい基本を3つだけご説明します。
■基本(1)【ドリンク剤、ミニドリンク剤とは?】
『栄養ドリンク』は、厳密に液量が定められています。液量が100mLのものを通称「ドリンク剤」、20・30・50mL・70mLのもの、つまり100mL以下のものを「ミニドリンク剤」と呼んでいます。それ以上の液量もそれ以下もありません。ですから、ペットボトルでごくごく飲めるドリンク剤!なんていうのは、逆立ちしても作ってはいけないのです。
また、栄養ドリンクの入ったオープン冷蔵庫(ストッカー)には、一見すると医薬品・医薬部外品にみえる『清涼飲料水』が含まれています。なぜ、清涼飲料水なのかというと、医薬品・医薬部外品ドリンクは、開発・厚生労働省への承認申請等で、コストと時間がかかるため、「えーい早く市場に出しちゃえ!」って時は、清涼飲料水にするしかないのです。
その為、清涼飲料水に分類されるものを買う時は、信頼できる製薬・食品・化粧品メーカーのものを買った方が無難です。
■基本(2)【ドリンク剤の成分とは?】
ドリンク剤の成分には、
・ビタミン、カフェイン、タウリン等だけのシンプルなもの
・それに生薬や、その他の成分をプラスしたもの等があります。
某薬業界誌で、「高いものほど効くという考えは誤り」と書いている方がおられました。厳密に言えばそうかもしれません。しかし私は、成分が多いと高い!生薬が入ると高い!そして、効果が持続する傾向にあると考えます。おおむねそれで間違いありません。
■基本(3)【医薬品と医薬部外品はどう違うのか?】
もともとの言葉の定義としては、「医薬品」よりも効き目が穏やかで、副作用等の安全性が高いものが「医薬部外品」です。最近、テレビや新聞等で「コンビニで薬が買えるようになった!」というニュースをご覧になった方もおられるでしょう。平成11年、薬局やドラッグストアでしか買
えなかったドリンク剤など医薬品の一部が、規制緩和となり、スーパーやコンビニでも買えるようになりました。そして今年、平成16年からは、整腸薬やビタミン剤など更に350品目が規制緩和となりました。行政は、段階的にスーパーやコンビニで売れる医薬品を増やしていく予定です。
すでに施行されていますが、この規制緩和の是非については、それぞれの立場(小売店、メーカー、薬剤師会等々)で、未だケンケンガクガクな部分が多いのです。
例えば、薬局・薬店側としては、せっかくの専売品が他のチャネルで売られる(つまりライバルが増える)ということで反発しますし、メーカーとしては、薬局もコンビニも大切なお得意様なので板ばさみですし、医薬品として作った製品のラベルを「医薬部外品」に作り変えなければいけな
かったりコストがかさみます。薬剤師会としては「コンビニで薬を売って本当に安全なのか?副作用が出たらどうするんだ」「薬剤師が説明して売るものじゃないのか?」等々こちらも反発が大きいのです。
そこで、薬局・薬店向け(医薬品)や、スーパー・コンビニ向け(医薬部外品)を新たに開発投入するなど、各メーカーも工夫を凝らしています。
さて、ドリンク剤を真剣に説明すると、恐ろしいページ数になりますので、今回は名前を確かめる程度にさせていただきます。
●売れ筋ドリンク(100mL)
・リポビタンD(大正製薬)
・チオビタドリンク(大鵬薬品工業)
・エスカップ(エスエス製薬)
・新グロモント(中外製薬)
・ファンテユンケル3B(佐藤製薬)
・ハイゼリーB(ゼリア新薬工業)
・アリナミン7(武田薬品工業)
・ユニードリンク1500(小林薬品工業)
・ダイナミカ3000(NID;日本ドラッグチェーン)
・バイトゴールド2000(伊丹製薬)
・アスパラドリンクII(田辺製薬)
・リゲイン(三共)
各メーカーの売れ筋は、タウリン、ビタミンB群が主成分で、1本100円台のシンプルなものばかりです。グロモントシリーズ(中外製薬)だけは、肝臓の血流量を増やす効果のグルクロノラクトンが主成分です。ハイゼリーB(ゼリア新薬)は、売れ筋にはめずらしく1本500円の高額商品です。しかし各製品、実勢価格は・・・。
ドリンク剤の名前についている1500〜3000の数字は、タウリンの配合量(mg)を指します。基本的には1000mg配合なので、1500・2000・3000の場合は製品名に入っていることも多いのですが、ラベルを見ないとわからないものもあります。
数年前、タウリン3000mg配合のものは、ダイナミカ3000くらいだったように記憶しておりますが、今やいくつも出ていてビックリです。医療用のタウリン(タウリン散「大正」;大正製薬)は1回1g(1000mg)1日3回(3000mg)ですので、医療用と同じ配合量です。個人的には、多ければいいってもんじゃないような気もしていますが。
ちなみにダイナミカを発売しているNID(日本ドラッグチェーン)とは、株式会社ではありますが、多くの薬局等が加盟する商工会のようなものです。他にAJD(オールジャパンドラッグ)なども同様に、多くの薬局・薬店が加盟している団体もあります。
ところで売れ筋ドリンクには、大抵カフェインが含まれています。カフェインは、頭がすっきりし眠気が覚めます。配合量は、20〜50mgくらいですが、50mgが主流です。だいたいコーヒー・紅茶・緑茶1杯分ぐらいの量です。風邪薬や鎮痛剤にも含まれていることが多いので、カフェインに弱い方は、「カフェイン抜きのドリンクを」と指定すれば、各メーカーから出ていますので買う事ができます。
逆に、「眠気覚まし用」のドリンクでは、カフェインが1回につき、150〜200mg程度配合されています。胃が荒れている人は飲まない方が良いです。
(くれぐれも、用法用量をお守りくださいね。)
さて、ドリンク剤の用量は「1日1本」というのを意外に知らない人がいます。
1日2本くらいならまだしも「10本飲んだんですが、身体に悪くないか?」と聞かれた事もあります。
そりゃ、身体に悪いに決まってるでしょ!どんなに良い薬でも、異常にたくさん飲めば死ぬことだってあるのです。
その人は何も処置せず無事でしたが、皆さんも気をつけてくださいね。
●●本日のオマケ・クイズ●●
Q.平成16年5月24日、山之内製薬と藤沢薬品工業が、正式に合併契約書を締結しましたが、
社名はなんだったでしょうか?
A.病院の薬部門は「アステラス製薬株式会社」(Astellas Pharma inc.)
星というラテン語、英語で「先進の星」を意味するそうです。そして、OTC部門は、同年10月1日から営業開始の「ゼファーマ」。ギリシャ語で「生きる」を意味する“ゼ”と、春の息吹を運んでくるそよ風“ゼファー”を合わせたそうです。
「アステラス」と「ゼファーマ」。まるで外資系企業のようですね。
事実上吸収合併なのですから、個人的には、山之内製薬の名前を残した方が良かったのでは?と思ったりして。ちなみにゼファーマの主力製品は、ガスター10、カコナール、AGノーズ等で
す。
■編集後記■
先週のニュース「ハエ並み?ヒト遺伝子」が、かなり気になりました。人間の遺伝子の数が従来の推定より約1万個も少なく2万2千個程度と見られることが、日米英など6か国の国際研究チームによる解析でわかったそうです。ハエの遺伝子は約2万個前後なので、意外と差が小さいのですね。で、私の頭に浮かんだのは、ハエ人間でした。ハエと人間を間違って一緒に電送したら合成されちゃったっていう映画がありましたよね・・・ハエにんげーん!
(追記:2006年11月10日付け 米科学誌「サイエンス」発表
ウニのゲノム(全遺伝情報)の解読を、欧米の研究チームが完了。遺伝子数はヒトとほぼ同じ2万3000個で、遺伝子の70%がヒトと共通している。ハエとヒトは40%、チンパンジーとヒトは99%だそうです。)
(2004年10月)
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